2か月前に観たシン・ゴジラの感想

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還暦を迎えたゴジラの新作である。

前回のゴジラ・ファイナルウォーズが2004年であるから、12年ぶりの新作だ。

ところで皆様はエビングハウスの忘却曲線をご存じだろうか。

上記によれば、特に復習を行ったりしなかった場合、1ヶ月前に記憶したことは1ヶ月後後には79%は忘れているんだそうな。

よって、2ヶ月前に一度だけ観た映画の感想を書く場合、映画に関する記憶が8割以上失われた状態で書くことになるのだ。鶏以下の記憶力しか持ち合わせていない私にこれは難しい。そんなわけで、そういう感想だと思って読んで頂ければ幸いだ。

 前作から12年、その間本当に色々あった。

海の向こうではまたゴジラが造られた(今度はマグロ喰ってるような奴じゃなかった)し、東宝の事業形態も大きく変わってきたし、2011年には震災もあった。

 

庵野秀明にも色々あったんだろう。この記事がよくまとまっている。今更敢えて言うことでもないが、エヴァンゲリオンは呪いのような作品だ。良きにしろ悪しきにしろ、それまでのアニメや、受け手の感覚を大きく変容させてしまったという意味では、放射能とかに近いのかもしれない。庵野エヴァという呪いの中心でずっと被曝し続けているんだ。そりゃおかしくもなるわ、って思う。

 

このシン・ゴジラであるが、制作が発表されて以降、ろくすっぽ事前情報が出回らないままであったので、正直個人的には期待三分に不安七分といったところだった。実写映画に関して庵野作品が良いと思ったことはないし、2014年のマグロ喰ってない方のハリウッドゴジラが、(100個くらい文句はあるけども)きちんと金を掛けた気合いの入った作品だったので、今更日本でゴジラって言われてもなあって思いつつも、平成ゴジラで大きくなった身として、やっぱり観ておかねばならぬという義務感があってだな。で、私が観に行ったのは公開から2,3日経過した後だったんだけれども、蓋を開けてみればむっちゃ庵野印の怪獣特撮映画だった。どちらかと言えば良いほうの。

 

話のあらすじはこうだ。

ゴジラが現れる。街が壊れる。人間が会議をする。東京でゴジラが暴れる。人間がゴジラを止められない。人間が会議をする。街が壊れる。人間が死ぬ。人間が会議をする。人間が頑張ってゴジラを食い止める。以上。

 

特に印象的なのは、往年のゴジラ音楽に加えて、作中の8割を占めると思われる人間たちの会議のシーンで流れるエヴァヤシマ作戦のBGMだ。これには流石に劇場でコーラ吹き出しかけた。他にも随所に挿入される明朝体のテロップとか、ゴジラを食い止める作戦名がアレだとか、完全に開き直っているとしか思えん。

 

ゴジラ自体の描写もそうだ。ゴジラに対するゴジラ観はそれこそ十人十色であり、一概に言えんが、本作のゴジラは徹頭徹尾害獣として描かれている。これはゴジラ映画としての描かれ方よりもウルトラマンに登場する怪獣の描写に近いし、そのものずばりエヴァに出てくる使徒っぽい。

 

そんなこんなで庵野カラーが全面に発揮されたシン・ゴジラは、制作が発表された時に想定してたものよりは随分と面白かった。武蔵小杉の高層マンション街がぶっ壊されたり、最終的に虎ノ門ヒルズが吹き飛んだりしたのは最高だった。不謹慎だろうがなんだろうが、見知った風景がぶち壊れる魅力には抗えないのだよ。

 

ただまあ、公開後のネットの狂騒にはほとほと辟易したし、私の周囲の友人らも絶賛してる人が多かったが、個人的にはファイナルウォーズよりは面白いけどファイナルウォーズよりかったるい所あるし、vsビオランテには半歩くらい及ばない感じ。初代ゴジラに比肩などとはとてもとても。

 

ファイナルウォーズとシン・ゴジラの双方に共通してるのはある種の「軽薄さ」なんだよな。前者はそれが清々しいバカとして機能していたが、シンゴジは滑ってる部分が多々あったように感じる。大事な場面で「戦後は続くよどこまでも」とかクソセンスのないセリフが出てくるの本当に良くない。本作は本当に人間がずっと会議やってる映画なんだが、矢継ぎ早に情報が出てくる割に大したこと何も言ってないのもどうなんだ。

 

あとこれは不満というわけではないが、ゴジラ映画の主体はやはりゴジラでなくてはならないと思っている。シンゴジを観た時に感じた引っ掛かりは、この映画の主体がゴジラではなく人間にあった所なのだ。そういうのもあって「、ゴジラ映画」を期待して観に行った身としては、なんか違う、と感じずにはいられなかったんだよな。

 

ともあれ、「私は好きにした。君たちも好きにしろ」という作中の言葉が、この映画を一言で言い表すのに最も適した言葉であろう。その潔さはやはり素晴らしいと思うのだ。

 

2017年には虚淵玄によるアニメ版のゴジラの話もあったり、今回のシン・ゴジラの評判を受けて、ゴジラシリーズが息を吹き返したようにも見受けられるが、この流れが持続してくれれば嬉しい。